《詩》雨と恋人たち


 

湿る 硬い土の街なみ

捨て猫 黒ぶち茶ぶちの兄妹さ

迫る いつのまにかの二人ぼっち

どちらが先にやってくる

 

両頬に跳ねて気づく雨

舗装道路の網目の池が

ダンボールの中までしみきったから

びしょ濡れのまま途方に暮れる

 

手渡したボディタオルじゃ足りなくて

くたびれる前髪のパーマ

開けっ放しのホテルの窓と

覚えているよ雨のにおいを

 

湿る 重い空の街なみ

ぼくは黒ぶち 茶ぶちと兄妹

遠ざかる いつのまにかの二人ぼっち

誰から先に去ってゆく

 

ガラス戸に跳ねて気づく雨

トリハダ立つぼくを見下ろす野うさぎ雲が

白く輝く昼下がり

となりで寝転ぶ裸の茶ぶち

     

背中にできたほくろをたどって

しなやかな茶色がたれた君のうなじ

開けっ放しのホテルの窓と

覚えているよ曇りの味も

  

湿る 黒い頭を燃やす鏡の街なみ

ぼくは黒ぶち 茶ぶちと兄妹

満ち足りる この時だけでも杯からあふれて

おちる雨がハイカラあふれて

 

ばらばらと怒鳴りつける入道雲が

咎めるように窓から息を吹き込んで

布団の中で黙る二匹の耳が立ち上がる

此の下に稲妻おこる宵あらん